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2013.12.1112/1「台風で流れてしまったオープニングトークの話」レポート

12月1日、「SITES」クロージングイベントのひとつとして、大田 高充 × 小柳 裕 ×(国谷 隆志) × 吉田 周平+つぶ「台風で流れてしまったオープニングトークの話」を開催しました。
このトークは、吉田 周平+つぶが「話す」ことをテーマに今回のプロジェクトを展開していることに着目し,同じく出品作家である大田 高充・小柳 裕・国谷 隆志の3氏とのトークイベント内容を企画してもらいました。

通常の、展覧会の出品作家が自身の作品や展覧会について話すトークイベントとは異なり、ラジオを聞いているような形式で行われました。出演者は、カフェテリア結の隅のソファ席で向かい合いながら気楽なトークを進めます。その音声は会場のスピーカーから流れ、来場者は、出演者がどこにいるのかも曖昧なまま、カフェテリア結でのティータイムを楽しみながら、トークを聞いたり(聞かなかったり)という時間を過ごします。

 

 

国谷 隆志さんは同時期個展開催中のGallery PARC(京都)から、スカイプでの参加です。

 

 

各テーブルには、吉田 周平+つぶが事前に各作家に依頼したアンケート(名前は伏せられた状態)、「理想の場所」ドローイング、作家オススメのお菓子が置かれています。トークはそれらを軸に行われました。

 

 

●アンケート回答について→アンケート回答PDF
アンケートは、どこフェチ?好きな肉の部位は?好きな人がいるとき、どこに座る?etc.、ざっくりと「SITES」…「場所」に絡めた質問です。

国谷:
興奮する場所は、工場のような場所。工場のような場所で生活もしたい。そこに何か置いたら家になるし、家は別にいらない。制作と生活を密着させたい。←「僕は分けたい派だなー」(吉田)
自分は何なのかとか哲学的なことが気になっていた高校くらいのとき、図書館を物色していたら、マルセル・デュシャンとか、現代アートの元みたいなものを見つけて、考え方が作品になる、というのはおもしろいなと思って、それをやろうと思った。
子供の頃、野生児と言われてた(笑)。田んぼや山によく行っていて、絵を描いたりするよりは粘土や泥をずっと触ってた。そういう意味ではものづくりが元々好きだったかも。

 

大田:
つくるために大切な場所が「居心地の悪いところ」なのは、居心地がいいと、それ以上何もしなくていいかなと思ってしまうから。だから実家はあまり帰らない。作品展示する空間でも、ここをどうかしたほうがいいんじゃないか、というところがどこかにあった方が、何かしてみようと思える。←「ストレスがあった方が作りやすいということですね」(小柳)、「自ら居心地の悪いところに行こうとするんですか?」(野村)→意図的にはしない。
興奮する場所は「人気のないところ」。普段、人がいる場所なのに、誰もいない瞬間がおもしろい。←「確かに、交差点とか、一瞬無人になると興奮しますね」(つぶ・谷川)
山を切り崩して作った街、ニュータウンで育ったので、あるところですぐド田舎になって雰囲気が変わってしまう。田舎と普通の近代的な生活を行き来するような感覚は、常に制作のキーになっているかも。実家は、大学と似た風景。通学していたときは、似たような風景からまた似たような風景に行く、という感覚がすごく印象に残っている。今回はそれを作品にできないかと考えた。
いま住んでいるところは光が入ってこない、雨が降っていることも分からない。窓が一個だけあるが、すぐ目の前にビルが建っているので、機能していない。窓が雨をはじく音でなんとなく気づいたりする。そこで制作もしている。実家の方は見晴らしが良いので、いろいろ環境を読み取る方法があるが、いま住んでいるところは、読み取る方法がない分、どうしたら読み取ることができるかを考えて、導き出すことで、気づけているのではないかと思う。分かっていることに気づくことができると思う。

 

 

つぶ・野村:
出身地・新潟は曇りの天気ばっかりで、そういう性格を自分はもらっている気がする。新潟は平地で、「向こう側が開ける景色」が滅多になかった。海に行くとずっと海が広がっているので、違う景色が見たい、という思いはずっとあって、滋賀にまで来たところはある。
水辺はパワフルやな、と思う。そばにいると元気が出る。
つくるために大切な場所は「ふとんの中」。一回寝ないと、はじまらない。←「寝たら忘れない?」(小柳)→ビビッと来たものは忘れない。寝ないといい流れができないと思う。

吉田:
僕も地元は中途半端なニュータウンみたいなところだった。僕は国谷さんみたいに手を使った遊びよりは、ルールを考えるのが好きだった。鬼ごっこだったら、鬼ごっこする範囲を街全体に広げたり、学校ではやっちゃダメ、って決めたり。自分も参加しながら。←「テレビゲームがなかった頃はわりとそういう遊び方でしたよね」(小柳)、「ルール決める人ってだいたい負けないですよね。笑」(つぶ・野村)

 

小柳:
和歌山市出身。子供の頃は、工場地帯があるような、日本中どこにでもあるような、郊外の寂しいところで育ったので、心象風景がそういうところになっている。←「特徴的な地形や歴史のある土地への憧れはあります?」(吉田)→あまりない。ニュートラルな郊外に育ったことが、作家としての原点と思っている部分もあるので、大事にしている。
つくるために大切な場所=共同アトリエは、今年8年目。作品が影響しあっているわけではない。アトリエに行っても話しかけないこともある。誰かが制作しているというのが、なんとなく心強い。作る場所があるということは、行ったら作るしかない。大田さんのように、プレッシャーがあったほうがいいという話があるが、共同アトリエだと、人目もあるし、作るしかなくなる。

つぶ・谷川:
高いところが好き。空気の通らないところは怖いと思ってしまう。風通しが良いところは、頭の回転が良くなる気がする。
高知の実家に帰るとき、山の中を抜けていくうちに、自分よりも何百倍も大きい山を見ているのが自分にとって大事な時間。

 

 

●「理想の場所」ドローイングについて→ドローイングPDF
つぶ・野村:
1個決めるのはよくない、いろんな場所が同時にあるのがよいと思っていて、いろんな場所に行くための拠点として、ふとんの絵。何かあっても寝れば大丈夫。←「しっかりしてるな、女性的かも。そういう軸ほしい。」(吉田)

つぶ・谷川:
F1のシューマッハの写真の周りに適当な線の絵。プロフェッショナルな人が居るところに居たい。そういう人になって、できれば一緒に仕事をしたい。最近、かちかちしているだけじゃなくて、緩やかさがあるのが面白いなと思っていて、ギリギリの現場の中に、意味のない、かたちの定まらないようなものがあって、楽しんじゃうようなことができればいいなと思う。

小柳:
黒の背景に、光のような点が同心円上に広がっている絵。場所はどうしても思いつかなかった。いつもかすかに光が見えてたらいいなと思って。まあ心象風景ですね。光が、昔から制作のキーワードにもなっているし、いいかなと。←「宇宙みたい。光に相当思い入れがあるんですか?」(吉田)→かなり小さいときだが、絵を描き始めたとき、なんで絵の具で描いたものが、光に見えたり風景に見えたりするんだろうとか考えていたのが、わりと制作の原点になっている気がしている。夜景の絵を描いていたころに、そういう経験を思い出したりしていた。←「小柳さんの絵は、見ている人の立ち位置や自分のポジションを問われる感じがする。画家の描いている時間と、観る人の見ている感覚が触れ合うというか。絵画より彫刻を見ているような感覚があるかも。」(吉田)→彫刻は、むき出しで置いてある感じで、見る人と作品が同じ空間で対峙するから、見る側に委ねられている部分が絵画より多い感じがする。絵画は、説明しようとすればけっこう説明できてしまうけど、できるだけそこはシンプルに、鑑賞者に委ねられるように考えているかも。

 

 

大田:
普段絵を描かないのでどうしたものかと思って、いろいろ悩んだ結果描いたもの。太い線が家で、そのなかに飛び込めたらというイメージ。線の中には、家の中にないものを描いている。常に理想の場所を展示空間に作ろうとしていて、家の中でも外の状況を把握できるような、中と外のバランスが取れた居心地の良い空間が作れたらと思っている。そこに欠けているであろうものを補って、快適だなと思うものにしていくようにしている。今回展示した作品の説明みたいな絵になった。←「実家に帰ったら、めちゃくちゃ作品変わるかもしれないね。笑」(吉田)→その通りだと思う。通学していたときは音楽でも激しいものを聴いていたりした。

吉田:
場所というよりは状況。軸がないと言っていたけど、かたちがなくて、その都度、他者との関係がかたちになっていく、みたいな状況が面白いと思う。何かに制限されずに自由に、ムダなものとか、誰かにとって意味がないものでも、もしかしたらそれを作ることで全然違うコミュニケートができるかもしれないというのが、興味があること、これからやっていきたいこと。←「作品やなこれは。」(大田)、「子供の頃の、ルールをつくる話とリンクしますね。今回の企画も、原体験が作品になっている感じ。客寄せパンダがいるわけじゃなくて、身近な人が他愛もない会話を交わしているところとか。」(小柳)


国谷:
(スカイプの調子が悪く、他の出演者たちで想像の会話。)
写真が2点。「野村とふとんでかぶってますね。」(吉田)、「dia beacon、ドナルド・ジャッドのスタジオじゃないでしょうか。」(大田)


時間が足りず、すべての質問事項について話すことはできませんでしたが、住んでいた場所や子供の頃の遊び方のことを聞いていると、各作家たちが現在制作している作品とつながる部分が多く、とても興味深いトークとなりました。

 

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左から、吉田周平、大田高充、小柳裕、野村彩絵(つぶ)、谷川智美(つぶ)

 

最後にはじめて来場者に顔を向けてあいさつ。拍手の中、終了しました。
ご来場のみなさま、ありがとうございました。

photo | Asano Takeshi

 

●「SITES ふうこうのありか」展覧会情報はこちら

●12月1日|「台風で流れてしまったオープニングトークの話」イベント情報はこちら

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