この数年間、家をモチーフとするインスタレーションを中心に、作品制作に取り組んでいます。 家は日常生活の背景であり、多くの人にとってほとんど意識に上ることがないものかもしれません。しかし家は、社会に生きる人の生活を映し出すものであり、それをつぶさに見つめることは、社会の一端に触れることに他なりません。私はこうした考えに基づき、作品制作を通じて、自身の暮らしてきた現代の日本の家を捉えるとともに、その周囲に広がる社会について考えています。
(松井 沙都子)
様式としての「HOME」
松井沙都子の「Home Interior」シリーズは、まるで現代住宅の室内の一部を切り取ってきたかのようなインスタレーション作品です。この作品で作者は、例えばモデルハウスにおいて描かれる「マイホーム」のように、一般化された理想的な住環境のイメージを、むしろ時代的に要請された虚無感を表出するものとして捉え、何かが欠落したような印象の作品を構成します。本展出展作品は、かつて20世紀の日本において、マジョリティとしての核家族とともにあった「マイホーム」なるものの再考を促すとともに、少子化が進行し、家庭・家族のあり方が多様化する現在の日本において、人々が「家」に求めるものが何であるかを、考えさせることになるでしょう。
(キャンパスが美術館)
撮影:株式会社 KYO-ZON
松井 沙都子|Matsui Satoko
1981 兵庫県生まれ、大阪府育ち
2004 京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業
2006 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了
2017 博士(美術)(京都市立芸術大学)
主な個展
2019 「ホーム・スイート・ホーム」(MEDIA SHOP gallery 2/京都)
2018 「モデルハウス 」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
「抽象住宅-ワンルーム-」(ギャラリー恵風/京都)
2015 「ブランクの住空間」(Gallery PARC/京都)
2013 TWS-Emerging 206「Blind Place」(トーキョーワンダーサイト本郷/東京)
主なグループ展
2019 「小さいわたしたち」(+1art/大阪)
2017 「Big Sensation」(Gallery Den mym/京都)
「OPEN STUDIO ×5」(ウズイチスタジオ/京都)
2016 「TEMPEL/MATERIAL」(大徳寺黄梅院/京都) 「幻想の質量」 (2kw gallery/大阪)
2015 「Studio Exhivisit 2015」(ウズイチスタジオ他/京都)
「Visual Sensation vol.6」(Gallery Den mym/京都)
2014 「はならぁと こあ」 ならきたまちエリア「在り処をみる」(工場跡/奈良)
2001 FIBER ARTEXHIBITION(Window Gallery Oct/京都)
ワークショップ
2019 明倫ワークショップ「家の話を聞かせて −光のインスタレーションを作ろう−」(京都芸術センター) 助成
2018 公益財団法人野村財団
参考作品
《ホーム・インテリア(壁)》2018/244×304×44.4cm/木材、壁紙、照明器具/
Photo by Takuya Oshima, courtesy of Kyoto City University of Arts
《ホーム・インテリア(床)》
2018/37.2×244×244cm/木材、フロア材、照明器具/Photo by Takuya Oshima, courtesy of Kyoto City University of Arts
《抽象住宅(1R)》
2018/37.2×244×244cm/フロア材、木材、LEDシーリングライト、モルタル、カーテン
《ホーム・インテリア》
2015/170×128×128cm/壁紙、カーペット、木材、照明器具