展示概要
琵琶湖の周囲をめぐる旧街道では、様々な人とともに様々なものが行き交うことで、文化が育まれてきました。附属近江学研究所で検証されてきた「もの」はそんな過去からもたらされ、未来の暮らしに活かさねばならないものたちです。琵琶湖を舞台に活躍してきた木舟や、魂と現世の人々とを繋ぐ仏壇ほか、実物とともに紹介します。
出展作家
●『道の国の浮世絵コレクション』(成安造形大学所蔵作品)@聚英館1Fロビー
本学所蔵の近世浮世絵コレクション71点の中から、デザイナー三重野 龍が宿場町や大津絵、近江八景をモチーフとした作品を選び、アートワークを制作。近世物流の要であった「街道」にスポットを当てたそれらの作品は、本展広報物にも使われています。
●『近世のかたちを今に伝える「小幡人形」』@聚英館1Fロビー
小幡人形とは、江戸時代前期より旧中山道と伊勢、多賀を結ぶ信仰の道、旧御代参街道が交差する小幡地区でつくられてきた県内唯一の土人形です。今もなお当時受け継がれるそのかたちには、天神やお多福などの縁起ものの他、教訓話をもとにした饅頭食い人形など、時代を超えて残すべき造形を見ることができます。今回はその中でも江戸期享保年間、小幡人形細居家初代安兵衛の「かたち」をご覧いただきます。
●『不易流行、時代とともに受け継がれて来た街道の民画「大津絵」』@スパイラルギャラリー1F
「大津絵の 筆のはじめは 何仏」と松尾芭蕉の俳句にも登場する街道の民画、大津絵。旧東海道、大津大谷、追分の街道で土産物として江戸時代から販売されており、極端に減筆された筆法で描かれた鬼の念仏や瓢箪鯰などの滑稽なキャラクターは、現代のゆるキャラの原点とも言われています。堅田の田舟の展示とともに、味のある舟板の古材に描かれた民画の美を展示します。
●『先祖を大切にする心「仏壇のお洗濯」』@スパイラルギャラリー2F ギャラリーキューブ
戦国時代の武具生産の技術を継承したといわれる彦根仏壇は、塗師や木地師、錺金具師など今もなお多くの職人の技術に支えられています。特徴的なのは、約半世紀に一度、一旦すべてを解体して洗浄し元の姿に戻す「お洗濯」と呼ばれる作業を行うことです。ギャラリーキューブでは、その解きほどかれた仏壇の姿を展示します。
●『MUSUBU 地図』@I棟1F総合受付
近江は湖の国であり、また道の国でもあります。近世には琵琶湖を囲むように旧街道が巡り、東国と京の間を多くの人々が往来し、そして、琵琶湖上でも荷物を積んだ無数の舟が帆を進めました。今回、そんな近江の「道」を俯瞰(距離を置いて全体を改めて捉えようとする)する視点で考察できるような、MUSUBU 地図と名付けた大きなマップを制作します。山や湧水、湖上交通や近世の港、旧街道や宿場町に加え、現代の交通などを重ね合わせた、本展を総合的に楽しめる地図となるでしょう。